伊藤高德税理士事務所

伊藤高德税理士事務所 > 相続 > 相続税額ゼロでも申告義務が生じることがあります!

相続税額ゼロでも申告義務が生じることがあります!

相続, 記事一覧

相続発生に伴い相続税が課されることもありますが、実際に納付が必要となるシーンはそれほど多くありません。しかし注意したいのは、「納付すべき税額がゼロであっても申告手続きが必要な場合がある」ということです。

申告義務と納付義務は区別して理解しておかないと、思わぬペナルティを受ける危険性があります。

申告の必要性を判断する簡易な方法

相続税の申告義務は「納付すべき相続税があるかどうか」で決まるのが原則です。

被相続人の財産総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いて課税遺産額を計算し、そこから各種控除を適用した結果、納税額が発生すれば申告が必要となります。
※期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内。亡くなった当日にその事実を知ったのなら、死亡日の翌日から10ヶ月後までに申告しないといけない。

言い換えると、基礎控除により遺産総額がそもそも課税対象にならなければその時点で納付が不要であると判断できます。

ただ、基礎控除額の範囲内かどうかを判断するときは以下の点に注意が必要です。

  • 相続開始前7年以内の生前贈与財産も相続財産に加算すること
  • 生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産も含める
  • 相続時精算課税制度を適用した贈与財産も加算する
  • 相続債務や葬式費用は控除できる

申告義務が生じる特例・控除の種類

特定の特例や税額控除を適用した結果として納税額がゼロになったときでも、その特例や控除を適用するための要件として申告が必要になるケースがあります。

特に注意しておきたい制度をご紹介します。

配偶者の税額軽減(配偶者控除)

配偶者が相続した遺産については、1億6,000万円または法定相続分のいずれか高い方の金額まで相続税が軽減することができます。そのため配偶者が多額の遺産を取得した場合でも、この制度により納税額がゼロになることは珍しくありません。

しかしこの制度を利用するには、次の要件をすべて満たさなければなりません。

  • 法律上の配偶者であること(婚姻届の提出が必要で、事実婚や内縁関係は対象外)
  • 申告期限までに遺産分割が完了していること
  • 相続税の申告書を提出すること

つまり、申告をしなければこの軽減措置は受けられません。

小規模宅地等の特例

被相続人が居住していた自宅の土地や事業用の土地などに関しては、一定要件を満たすと「土地の評価額を最大80%減額」することができます。この特例を「小規模宅地等の特例」と呼び、不動産相続における税負担を大きく左右する仕組みとして注目されています。

この特例で遺産総額が基礎控除額以下となり、結果的に相続税がゼロになるケースもありますが、配偶者控除同様、こちらも申告が適用要件となっています。

次の書類も添付して申告に対応しましょう。

  • 遺産分割協議書の写しまたは遺言書の写し(当該土地を取得したことの証明)
  • 被相続人や相続人の戸籍謄本(相続人であることの証明)
  • 相続人全員の印鑑登録証明書
  • 宅地の種類に応じた各種証明書類

農地等の納税猶予の特例

農地を相続するケースでは「農地等の納税猶予の特例」を利用することもあります。

相続後も農業を継続する場合に適用でき、農地にかかる相続税を猶予するとともに一定要件を満たせば最終的に免除してもらえる可能性もある制度です。

ただ、やはり適用を受けるためには期限内に申告を行わなければなりません。同特例ならではの提出資料もありますのでご注意ください。

判断に迷ったときの対処法

相続税の申告要否は、財産の評価や特例の適用判断など専門的な知識を要するため、一般の方が正確に判断するのは容易ではありません。

特に土地や非上場株式などの評価は複雑で、計算を誤ると過大または過小申告となるリスクが大きいです。

そこで少しでも不安や疑問があるなら、早めに相続税に詳しい税理士に相談することをお勧めします。相続発生後できるだけ早いうちに専門家に見てもらうことで、適切な財産評価、節税対策、申告手続きまでが対応可能となります。