伊藤高德税理士事務所 > 節税対策 > 生前贈与に相続税が課税されてしまう例と失敗を避けるためのポイント
生前贈与は相続税対策としてよく活用されていますが、適切な方法で行わなければ期待した節税効果が得られないどころか、かえって重い税負担が生じる可能性があります。生前贈与を行ったにも関わらず相続税の課税対象となってしまうケース、場合によってはペナルティを課されてしまうこともあるため、注意しながら対策を進める必要があります。
生前贈与をしたにも関わらず相続税が課されてしまう典型例として「生前贈与加算のルールを知らなかった」というパターンが挙げられます。
本来、相続税は相続開始時点で亡くなった方が持っていた財産に対して課される税金です。しかしながら、相続税法では相続開始の前7年以内に贈与された財産にまで課税対象を広げており、相続の直前に贈与をしても節税対策が得られない仕組みになっています。この仕組みを「生前贈与加算」と呼びます。
※すでに納めた贈与税があるときは相続税から控除できるため二重課税にはならない。
ただし、生前贈与加算は7年以内のあらゆる贈与に適用されるわけではありません。
まず、①非課税特例を使って一括贈与した財産(教育資金や結婚資金、住宅取得用資金など)各種については適用対象外です。そして②贈与税特例を相続の直前ではなく、4年前~7年前の期間に行われた贈与に関しては、その贈与財産の合計額から100万円を控除することが認められています。
また、このルールは2024年以降の贈与を対象とするため、③2023年以前の贈与に関しては「相続開始前3年以内」のみが加算対象です。つまり、2027年1月1日に相続が始まった場合、2023年に行われた贈与は相続開始前4年以内に入りますが、改正法施行前の贈与ですので生前贈与加算の対象になりません。
《 2027年に相続が始まった場合の生前贈与加算の対象 》
生前贈与をしていたつもりが、実質的には贈与と評価されず、相続税が課されてしまうケースがあります。
次のような特徴に当てはまる口座がある場合、「名義預金」と評価されて課税上は被相続人の財産として扱われるため注意してください。
60歳以上の父母・祖父母が18歳以上の子・孫などに贈与をする場合、1年単位で贈与税の課税を行う暦年課税(原則的課税方式)ではなく、「相続時精算課税」を選択することが可能です。
手続きを経て相続時精算課税の制度の利用を始めると、相続開始までに2,500万円の贈与を行っても特別控除により贈与税の負担を避けることができます。
※厳密には、1年あたり110万円の基礎控除も使える。
※相続開始後、贈与財産についても相続税を課税することで精算する仕組み。贈与税より相続税の方が税負担は小さくなる傾向にあるため、贈与時点の負担を抑えながら早期の資産承継ができるのが特徴。
しかし、いったんこの課税方式を選択すると同じ当事者間での贈与はすべて相続時精算課税の適用を受けてしまい、贈与財産に対して相続税が課されるようになります。つまり贈与で相続財産を減らすという、一般的な生前贈与による相続税対策はできなくなるのです。
生前贈与を失敗させない、節税効果を確実に得るためには、以下のポイントに注意してください。
上述のとおり生前贈与加算の適用を受けてしまうと、せっかく贈与を行っても節税効果が得られません。特に基礎控除(110万円/年)を有効活用して節税効果を狙うのであれば、計画を立てて早めに取り組むようにしてください。
相続と異なり、贈与で大金を渡してしまうと大きな税負担が生じてしまいます。基礎控除後の課税価格が1,000万円を超えていると40%もの税率が適用され、贈与したもののうち半分近くが税金で消えてしまうのです。
そこで大金を渡すときは特例が利用できないか検討しましょう。学費のため、結婚や子育てのため、自宅を取得するため、など一定の目的で行う贈与であれば手続きを経て、1,000万円などまとまった金額を非課税で贈ることができます。しかも、特例の適用を受けた贈与財産については生前贈与加算の対象にもなりません。
相続税の課税対象を減らすには、「贈与はされていなかったのではないか」と疑われないよう、贈与が行われたことを客観的に示せないといけません。
そこで家族間であっても口約束で済まさず、贈与契約書を作成しておくようにしてください。誰と誰が、いつ、何を、どうやって贈与するのかを記載して、契約書が証拠となるように備えましょう。
契約書以外にも、記録が残る形で贈与を実行するとそれも贈与の事実を立証する一資料として使えます。
名義預金とみなされる事態を回避するには、受贈者による財産管理の実態が必要です。少なくとも贈与の事実について当事者間で認識を持つようにし、以下の要件も満たすことを意識しましょう。
受贈者の方が年間110万円超の財産をもらい受けているときは、贈与税の申告を行ってください。これは法律上の義務であり、故意ではなく失念していただけでもペナルティを課されてしまいます。
申告しないまま放置していると「無申告加算税」の負担が追加で発生し、本来納めるべき額より数割増しで納税しないといけなくなります。また、非課税特例を利用しているときや相続時精算課税の適用を受けているときは、納付額がなくても毎年申告しないといけません。
さらに、納付期限から遅れると「延滞税」も発生するため、申告を忘れて長く放置していると益々税負担が膨らんでいってしまいます。
より避けるべき行為は、贈与された財産を隠したりわざと少なく申告したりする行為です。計算ミスで少なく申告してしまった場合の「過少申告加算税」とは異なり、悪質な行為に対してはより重いペナルティとして「重加算税」が課されてしまいます。ひどいケースでは刑事罰の対象にもなり得るため、十分注意してください。
「やり方が合っているのか不安だ」「どうすれば節税できるのかわからない」「脱税になっていないだろうか」と心配な方は税理士にご相談ください。