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事業承継で自社株はどうやって評価する?評価方式の選び方や計算の方法

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自社株の評価額は、事業承継の進め方を左右することにもなる重大な事項です。金額によっては自社が損をしたり買い手がつかなかったり、そして納めるべき税金の大きさも変わってきます。
税務上の評価と実際の売却価格では考え方も異なりますし、適切な評価方法を理解することが大事です。当記事では事業承継時の自社株の評価について取り上げましたので、ぜひ参考にしてください。

株式評価が重要な理由

事業承継において、自社株評価は「贈与税や相続税の計算」「第三者への売却価格の決定」「事業承継税制の適用」など、さまざまな場面で必要となります。

特に税務上の評価は国税庁の財産評価基本通達に基づいて行う必要があり、客観的・統一的な基準が設けられています。一方、第三者への売却では、将来の収益性や市場環境なども考慮した実勢価格での取引が行われることが一般的です。

評価のタイミングも重要で、贈与の場合は贈与日、相続の場合は被相続人の死亡日の価額で評価されます。業績の変動や市場環境の変化により、評価時期によって大きく異なる結果となることもあります。

主な評価方式と選び方

事業承継における株式評価では、目的や会社の規模、株主の立場によって適用される評価方式が決まります。税務上は評価方法にルールが定められており基本的には規定に従い評価方式を決定しなければならない点に留意が必要ですが、評価方式には次のように種類があることは知っておくと良いでしょう。

 

評価方式

特徴

類似業種比準価額方式

・同業他社の上場企業と比較して算定
・税務上は大会社に適用。
・収益性重視の評価

純資産価額方式

・会社の純資産額を基に算定
・税務上は小会社に適用
・資産価値重視の評価で使用

配当還元方式

・配当金額を基に算定
・税務上は議決権5%未満の少数株主に適用

DCF法

・将来のキャッシュフローを現在価値に割引して算定
・税務上は原則として適用されない
・M&Aや第三者売却の場面で選択する

 

税務上の評価では、会社を「大会社」「中会社」「小会社」に区分し、同族株主か否かによって適用方式が決まります。同族株主以外の少数株主には、会社規模に関係なく配当還元方式が適用。中会社の同族株主の場合は、類似業種比準価額方式と純資産価額方式を併用することもあります。

一方、第三者への売却やM&Aにおいては、当事者間の合意により評価方法を自由に選択できるため、DCF法などのアプローチも広く活用されています。

類似業種比準価額方式の仕組み

「類似業種比準価額方式」は、同業他社の上場企業と比較して株式価値を算定する方法です。

具体的には、評価対象会社の1株あたりの配当金額・利益金額・純資産価額を、類似業種の平均値と比較することで算出します。
※国税庁が業種別に公表している類似業種の株価、配当金額、利益金額、純資産価額を基準として採用。
※令和6年においてはこちらのページで公開されている。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hyoka/r06/2406/index.htm

この方式は、比較的規模が大きい会社で使用されることが多いです。また、純資産価額方式よりも低い評価額となる傾向があります。特に利益率が業界平均を下回っている企業や多額の含み益を持つ不動産などの資産を保有している企業では、実質的な資産価値に比べて低い評価となることがあります。

純資産価額方式の仕組み

「純資産価額方式」は、会社の資産から負債を差し引いた純資産額を基に株式価値を算定する方法です。帳簿価額ではなく、相続税評価額や時価を基準として各資産・負債を評価し直します。

たとえば土地は路線価や固定資産税評価額を基に評価し、建物は固定資産税評価額を使用。有価証券は上場株式であれば時価、非上場株式であれば同様の評価方法で算定。また、売掛金や買掛金なども回収可能性を考慮して評価します。

小規模な同族会社や多額の含み益のある不動産を保有している会社、収益性が低い会社などで採用されることが多い方式で、類似業種比準価額方式と比較すると、資産価値が高い会社では高い評価額となる傾向を示します。特に都市部で不動産を多く保有している会社だと想定以上に高い評価額となることもあるかもしれません。

配当還元方式の仕組み

「配当還元方式」は、株式の配当金額を一定の利率で還元して株式価値を算定する方法です。主に同族株主以外の株主や、同族株主グループに属していても議決権割合が少ない少数株主に適用されます。

この場合、「(年配当金額/10%)×(1株当たりの資本金等の額/50円)」という算式で求められ、ほかの方式と比較してもっとも低額になる傾向を持ちます。配当を抑制している会社であればより低い評価額となるでしょう。事業承継においては、後継者以外の親族株主などに適用されることが多いです。

DCF法の仕組み

「DCF法(Discounted Cash Flow法)」とは、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算定する方法です。税務上の評価では使用されず、第三者への売却やM&Aにおいては重要な評価手法となります。

具体的には、今後5~10年程度の事業計画を作成し、各年度のフリーキャッシュフロー(営業キャッシュフローから設備投資を差し引いたもの)を予測。そこから現在価値を割り出していきます。

この方法は、成長企業や収益性の改善が期待できる会社なら高い評価を得やすく、特に無形資産の価値が高いIT企業やサービス業などでは重視されます。ただし、将来予測に基づくため主観的要素も強く、前提条件の違いにより評価額が大きく変動する可能性があります。