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事業承継税制で株式移転の税負担を軽減!経営者や後継者が知っておきたい制度の概要

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事業承継で困る点の1つが「株式を後継者に移転するときの税負担」です。贈与税や相続税が大きな負担となることがあり、これが原因となり後継者への引き継ぎが上手く進まないこともあるのです。

そんな場合には「事業承継税制」の活用も検討しましょう。税負担を軽減し、スムーズな事業承継を支援する制度です。どんな制度なのか、概要をここでご紹介します。

事業承継税制が解決する課題

事業承継における大きな障壁となるのが株式移転時に生じる税負担です。この問題は、次のような形で現れます。

  • ケース1)生前贈与で高い税率が適用される
    株式評価額が5,000万円の企業について子へ承継する場合、株式の贈与にあたって最高で55%の税率が適用され、株式の価額の半分以上をキャッシュで納めないといけなくなる。後継者がこの税額を支払えない場合、借入をするなどしなければ経営権の維持ができず、株式の一部を第三者に売却せざるを得なくなる可能性もある。
  • ケース2)相続時の突然の税負担
    経営者が急逝して相続が発生した場合、遺族は10ヶ月以内に相続税を納付する必要がある。贈与税よりは適用される税率が小さくなるが、それでも数百万円あるいはそれ以上の納税義務が突然課せられることになり、納税資金確保のために事業用資産や株式の売却を迫られるケースもある。
  • ケース3)後継者不在による事業継続の危機
    税負担の重さから後継者候補が承継を躊躇し、結果として事業承継が進まないケースもある。これにより、黒字企業であっても廃業を選択せざるを得ない状況に陥る。

しかし事業承継税制の適用を受ければ、一定の要件を満たすことで贈与税や相続税の納税を猶予、場合によっては免除されることもあります。こうして事業承継が困難になることを防ぎ、円滑な承継を可能にする制度として機能しているのです。

制度の基本的な仕組みと種類

事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の2つがあり、それぞれ適用要件や優遇内容が異なります。

特例措置の特徴

特例措置は、2018年から2027年までの時限措置として設けられた、より手厚い支援制度です。

大きな特徴は、「特例の対象となる株式数に制限がないこと」「発行済株式のすべてが納税猶予の対象となること」です。納税猶予割合も贈与・相続ともに100%で、要件を満たし続ければ対象株式に関する税負担を回避できます。

また、複数の後継者(最大3人)への承継も可能で、現代の多様な承継ニーズに対応しているといえるでしょう。

ただし、適用を受けるためには2026年3月31日までに「特例承継計画」を作成し、都道府県に提出。確認を受けなくてはなりません。

一般措置の特徴

一般措置では、適用期限が設けられておらず、事前の計画策定も不要です。

しかし、優遇される程度は特例措置と比べて限定的で、「対象株式数は発行済株式の最大2/3まで」「納税猶予割合は贈与の場合100%、相続の場合80%」となっています。また、承継パターンも「1人の後継者への承継」に限定されています。

事業承継税制を利用するメリット

事業承継税制活用のメリットは次の3つにまとめることができます。

 

①税負担の大幅軽減

・最大のメリットは、贈与税や相続税の納税が猶予されること。
・特例措置を利用すれば、対象株式に関する税額を100%猶予することができ、一定の要件を満たし続けることで最終的に納税を免除してもらえる。
・本来であれば数千万円レベルの税負担が生じる場面でも、その負担をゼロにできる可能性がある。

②経営権の維持

・税負担軽減により後継者は株式の売却を迫られることなく、経営権を維持できる。
・安定した事業運営を継続できることで、従業員の雇用や取引先との関係も保持できる。
・外部資本の介入を避けることで、創業者の理念や企業文化を次世代へと継承できる。

③計画的な事業承継の実現

・制度の活用で経営者は税負担を気にすることなく適切なタイミングで事業承継を実行できる。
・後継者の育成期間を十分に確保し、より確実な承継が実現されやすい。
・生前贈与を活用すれば、経営者が存命中に後継者をサポートし、円滑な経営移譲を行うことも可能。

制度利用の注意点

事業承継税制はとても有用な制度ですが、利用に際していくつか注意すべき点があります。

1つは「制度の適用を受けた後も、継続的に一定の要件を満たし続ける必要がある」という点です。たとえば、後継者が代表権を失ったり対象株式を譲渡したりすると、猶予されていた税額の納付義務が生じてしまいます。また、雇用維持に関しても一定の基準を下回ると納税義務が生じる可能性があります。

もう1つは「スケジュールに余裕をもって計画策定へ取り掛かる」という点です。特に特例措置を利用するなら期限がありますので、早期の検討と計画策定が重要です。

また、適切に制度を利用するためにも、計画策定に取り組むためにも、「専門家のサポートを受けること」も重要です。制度の要件を理解し、適正に手続きを進めるため、税理士の活用もご検討ください。プロと併走して取り組むことで形式上の不備も防ぐことができ、スムーズに制度が利用できるとともに事業承継も円滑に進められるようになるでしょう。