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親族内承継で会社をスムーズに引き継ぐために知っておきたいこと

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経営者の子どもや親族に会社を引き継ぐことを「親族内承継」といいます。M&Aなどの方法と比べて周囲からも受け入れられやすく、経営理念を継承しやすいという特徴を持ちます。しかし後継者選びや税金対策など事前に準備すべきことも少なくありません。承継までの流れや注意点を把握して、トラブルのないように備えましょう。

親族内承継の特徴

親族内承継とは、現在の経営者が子どもや配偶者、兄弟姉妹、甥・姪などの親族に経営を引き継ぐことをいいます。

少子化や後継者不足の影響で最近では従業員への承継やM&Aを選ぶ企業も増えていますが、それでも親族間での経営者交替は承継方法として主流といえるでしょう。

事業の承継にかかる期間は?

親族内承継を含む、事業の承継は、通常短期間で終えられるものではありません。

後継者の育成も含めると5年~10年程度の準備期間が理想的とされています。単純に考えると、経営者の引退する年齢が70歳だとすれば、60歳頃には準備を始めた方が良いということになります。

親族内承継の基本的な流れ

承継の進め方に決まりはないためあくまで目安となりますが、以下で紹介する5つのステップを意識して進めると良いでしょう。

ステップ1:会社の現状を把握する

まずは自社の経営状況を整理することから始めます。

財務諸表の確認はもちろん、取引先との関係性、従業員の技術やノウハウ、経営上の課題やリスクなどを洗い出していきましょう。この段階で問題点に気付くこともありますし、丁寧に準備を進めることで承継後のトラブルも防ぎやすくなります。

ステップ2:後継者を選ぶ

後継者候補を選定し、本人にも意思の確認をしておきましょう。一方的に決めつけるのではなく、本人のやる気なども事前に見ておく必要があります。

また、適性や会社を率いていく覚悟があるかどうかも見極めなくてはなりません。

候補が複数いるときは親族間で対立関係を生まないよう配慮するなど、慎重なコミュニケーションが求められます。

ステップ3:事業承継の計画を策定

いつまでに、何を、どう引き継ぐかを明確にして計画を策定します。

後継者の教育、株式移転時期と方法、経営権移譲のタイミング、税金対策なども考慮して具体化していきましょう。

なお、計画は一度作って終わりではなく、状況の変化に応じて見直してバージョンアップしていくことも大切です。

ステップ4:関係者への周知と後継者の教育

社内で承継に関しての情報を共有し、事業承継を進めることへの理解を求めるため後継者を紹介します。

後継者を重要な会議に同席させたり、主要取引先への訪問に同行させたりして、社内および社外での信頼関係構築も進めておくと良いでしょう。

ステップ5:権利の移転

株式会社であれば株式を後継者へ移転させるなど、経営者交代のため必要な形式的な手続きも実施します。

株式の移転方法には「相続」「生前贈与」「売買」の3つがあり、いずれも最終的に株式とそれに基づく権限が移転しますが、次のような異なる特徴を持ちます。

 

移転方法

課税される税金

相続

・移転時期は経営者が亡くなったタイミングになる
・死亡と同時に移転するため計画的な準備が難しいこともある
・相続税が課税される

生前贈与

・移転時期は当事者間で決められる
・計画的に進めやすく、事業承継税制も活用しやすい
・相続税より税負担が重い贈与税が課税される

売買

・移転時期は当事者間で決められる
・計画的に進めやすいが、後継者に購入資金の準備が必要となる
・譲渡所得税が前経営者に課される

 

移転方法によって課税の方法も異なり負担義務者や負担額も変わってくるため、税金についても考慮しつつ取り組むことが重要です。

トラブルを防ぐために気をつけたいこと

大きな問題なく親族内承継を進めるために注意したいポイントをいくつか紹介します。

事業承継税制の適切な活用

後継者が株式を取得する際、株式評価額が高いと税負担が重くなることがあります。この負担を軽減するために活用を検討したいのが「事業承継税制」です。

一定の要件を満たした非上場会社の株式であれば、贈与税や相続税の納税が猶予・免除することができます。

実質的に税負担をゼロにすることも可能ですが、要件をいくつもクリアしなくてはなりません。特定の時期までに計画を策定して都道府県に提出し、贈与または相続を実行すること。後継者は贈与の前に会社の役員に就任していること。などの要件を満たす必要があります。

制度の運用方法は変更されることもありますので、最新情報をチェックし、税理士にも相談しながら対策に取り組むことをおすすめします。

ほかの親族との調整

後継者以外の親族への配慮も重要です。

早い段階で会議し、事業承継の方針を説明して理解を得ておくことが後のトラブル防止につながります。不満が出そうであれば、相続時に株式以外の財産で調整するなどの対策を打っておくと良いでしょう。

個人保証の問題の解決

経営者が金融機関からの借入に対して個人保証をしている場合、その処理も考える必要があります。保証の問題は、後継者候補が承継をためらう原因にもなりかねません。

後継者に保証を引き継がせるのか、「経営者保証ガイドライン」を活用するなどして保証を外すのか、早めに金融機関とも協議することが大切です。