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相続税における不動産価値の算定基準~相続人が知っておくべき評価方法について~

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被相続人が所有していた不動産は相続税の課税対象となります。不動産は多くの相続において遺産総額のうち大きな割合を占めるため、その評価方法を正しく理解することは適切な相続税申告を行うために重要です。基本的な不動産価値の算定基準をご確認ください。

一定のルールに基づく評価をしなければならない

相続税における不動産の評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づいて行われます。この通達は、相続財産の評価基準を示したマニュアルのような役割を果たしており、個別の評価方法によって評価額に差が生じることを防いで、相続税の負担の公平性を保つために設けられています。

そして財産評価基本通達では、不動産の価額は時価によって評価することが原則とされています。ここで重要なのは、時価とは「相続開始時点(被相続人の死亡日)における、不特定多数の間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」を指すという点です。

また、不動産評価においては土地と建物を分離して別々に評価します。そのため戸建て住宅であっても、敷地部分と建物部分に分けて評価し、その金額を合計することで不動産全体の相続税評価額を導き出すのです。

なお、相続人間で行う遺産分割協議においては不動産の評価方法に決まりはありません。相続人間内々で行う財産の分配であり、税金のようにほかの国民との公平性を意識する必要がないためです。

土地の評価方法

土地の相続税評価には、「路線価方式」と「倍率方式」という2つの評価方法があります。原則として路線価方式を適用するものとされていますが、具体的な評価方式は評価対象の土地が所在する地域によって決まります。

土地に路線価が定められているケース

路線価方式は「路線価が定められている地域における土地の評価方法」です。

そして路線価とは「道路に面した標準的な宅地1平方メートルあたりの価額」のことで、千円単位で設定されます。また、路線価は公示地価の8割程度の水準で定められ、国税庁によって毎年7月に公表されています。

路線価方式で土地の相続税評価額を計算するとき、基本的には[路線価×土地面積]で計算しますが、実際には土地の形状や立地条件によって利用価値が異なるため、その影響を考慮した各種補正率を適用しなくてはなりません。
主な補正率として、「奥行価格補正率」「側方路線影響加算率」「二方路線影響加算率」「不整形地補正率」などが挙げられます。

たとえば奥行価格補正率であれば、道路からの奥行距離が長すぎる、または短すぎる土地に対し適用します。土地の奥行が適正でなければ利用価値が制限されることから、評価額の減額補正が行われます。
また、いびつな形状をした土地に対しては不整形地補正率が適用され、特に使いにくい形状をしているときは数十%もの評価減が適用されることもあります。

路線価が定められていないケース

路線価が定められていない場合の評価方法は倍率方式です。郊外や農村部の土地であれば路線価の設定されていないことも多く、こちらの方式の対象となるケースが多いです。

そして倍率方式では、[固定資産税評価額×評価倍率]により相続税評価額を算出します。

評価倍率は国税庁が地域ごとに定めていて、土地の地目(宅地、田、畑、山林など)によって異なります。宅地なら通常1.0~1.2程度です。

このように倍率方式の計算は比較的シンプルですが、固定資産税評価額と実際の土地面積が異なる場合は、実際の面積に換算して計算しなくてはなりません。

借地権や貸宅地の場合

借地権とは「建物所有を目的とする地上権・土地の賃借権」を意味します。こちらも相続税の課税対象で、評価額は[自用地評価額×借地権割合]で計算されます。そして借地権割合は地域による異なるものの、一般的には30~90%の範囲で定められています。

また、借地権を設定して他人に貸している貸宅地に関しては、[自用地評価額×(1-借地権割合)]で評価額を計算し、借地権の存在によって評価額が減額されます。

小規模宅地等の特例は要チェック

土地は相続財産の中で単価がもっとも大きな財産、となる傾向にあります。そのため土地の有無や数、評価額の大きさが相続税の負担に直結するといっても過言ではありません。

そこで相続人となる方にチェックしていただきたいのが「小規模宅地等の特例」です。

これは相続した土地の評価額を一定限度で下げることを認める特例です。居住用に使っていた宅地であれば、330平方メートルまでの部分に関して最大80%の減額が適用されます。この適用が可能な場合、本来5,000万円の相続税評価額となる土地でも、その80%にあたる4,000万円分を非課税で取得できることになるのです。

事業用の宅地に適用できるケースもありますし、適用条件については細かく定められています。この特例を適用できるかどうかで結果が大きく変わってくるため、よく確認することをおすすめします。計算や適用関係が複雑で判断が難しいと感じるときは税理士にご相談ください。

建物の評価方法

建物の評価方法の仕組みは、土地の場合と比べてシンプルです。建物の利用状況によって以下のように区分されます。

自用建物の場合

被相続人が自宅や事業用として利用していた建物の評価額は、[固定資産税評価額×1.0]で算出します。

つまり、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。もし固定資産税評価額1,500万円の自宅なら相続税評価額も1,500万円です。
※固定資産税評価額は市町村から毎年送付される固定資産税課税明細書で確認可能。

貸家の場合

第三者に貸し出している建物(貸家)の場合、借家権の存在を考慮して減算します。そこで計算式は[固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)]となります。

また借家権割合は全国一律で30%と設定されていて、賃貸割合は建物全体の床面積に占める賃貸部分の割合から算出します。

一軒家を丸ごと貸しているなら賃貸割合は100%。よって評価額は[固定資産税評価額×(1-0.3×1.0)=固定資産税評価額×0.7]となります。

賃貸アパートであれば、各部屋の賃貸状況に応じて賃貸割合を計算します。相続発生時に空室があっても、それが一時的なものなら賃貸割合に含めることも可能です。空室期間が1ヶ月程度、継続的に賃貸されてきた実績がある、すでに新たな入居者の募集が行われている、などの事情があれば賃貸割合に含められる可能性は高いです。